渋谷の奥、松濤にひっそりとたたずむレンガ調のお店「Smoke down」
この街がもつ独特の雰囲気と見事にシンクロしたシーシャ カフェ&バー「Smoke down(スモークダウン)」様に、タイルをご採用いただきました。
タイルの選定にまつわるストーリーはもちろん、オーナー様こだわりのデザインコンセプトやシーシャの魅力など、幅広くお話を伺います。
渋谷区松濤とさいたま市大宮区の2か所でシーシャバー「Smoke down」を経営されているオーナーの岡島様。今回はタイルをご採用いただいた松濤の店舗にお伺いしました。
「Smoke down」という店名は、英語の「calm down(落ち着いて)」と「smoke(煙)」を掛け合わせた造語です。その名の通り、シーシャをたしなみながらゆったりと落ち着ける空間を提供しています。
閑静な住宅街、松濤の文化村ストリートに面してたたずむ店舗は、まるで長い年月、街と共に息づいてきたかのように静かに、しかし確かにその存在を主張しています。
Smoke downのデザインコンセプトとは?
—外観も内装も大変素敵ですが、どのようなコンセプトで作られたのでしょうか?
岡島様:松濤に出店するにあたって、自分のクリエイティビティに頼らないと決めました。“シーシャにも長い歴史があり、松濤も500年の歴史がある。30代の自分のエゴをだしても、その歴史の前では軽くなってしまう。” そういった考えから、シーシャが培ってきた文化や思いにのせてもらう形で店舗作りをしようと決めました。
シーシャの発祥には諸説ありますが、中東が起源とされています。中東からヨーロッパ、アメリカへと広まり、日本には約30年前に伝わりました。そこで、松濤店では中東からヨーロッパに広まった時代の、特にイギリスをモチーフとして外装や内装を決めました。
外装はレンガ調の造りで、ドアやドアノッカーには1800年代のアンティークを使用し、機能性よりも歴史的な趣を重視しています。店舗の外には1851年のロンドン万国博覧会で人気を博した日本のモミジを植え、内装には特注のステンドグラスを取り入れたり、店舗内の絵はタバコ関連でそろえています。
岡島様:シーシャ台はエジプシャンという機材を使っていますが、火入れの方法や処理、フレーバーなどのレシピだけは、日本人の口に合うように設定しました。
偶然の産物ではあるのですが、店舗内の空間は、建築の学校に行く前に自分のその時の知識で手作業で作業したため、一般的な規格にとらわれずに作られています。そのため、一般的に慣れ親しんだ感じと違う、非日常の雰囲気を感じられるかもしれません。
タイルを選んだ理由とその魅力とは?
—大変こだわりの詰まった店舗の中で、どのような理由でタイルを選んで頂けたのでしょうか?
岡島様:タイルの雰囲気や表情が好きで、利用させていただくことを決めました。タイルは表情が一個一個違うのが良いですよね。
私は職人かたぎの人にかこまれて育ったこともあり、手作りのものが好きです。シーシャもまた職人の世界で、火入れのタイミングや温度管理などは数値化できず、人の技でやるものなので深みがあり、果てしない面白さがあります。
同じように、タイルが製品化されて均質化されるまでには、それを生み出した人たちの努力やトライアンドエラーがあり、そこには多くの情報が宿っていると感じています。
例えば、Smoke downのような小規模の店舗でこだわりのつまったお店を始めようとした時に、本物を使うという候補もありましたが、本物志向をつきつめていくと金銭的な面での負担が大きく、経営的に回収しようとするとお客様への提供価格が高くなってしまうというデメリットがあります。一方で、規格化されたもので、価格を安くしただけのものでは味気なく、こだわりを表現することができない。そのような葛藤の中で、タイルという選択肢は、経年変化も楽しめるし、それぞれの風合いも楽しめるいい選択肢でした。
—タイルの実用的な面ではいかがでしょうか?
岡島様:シーシャバーでは炭が床に落ちることもあり、カーペットでは焦げてしまいます。タイルだと火事にならない点が安全性の観点で大変良いですね。磁器のタイルなら水がしみこむこともなく、モップ掛けをしてもいいのでメンテナンスの面でも楽ですし、雨の時に滑りづらい点も実用性を感じています。
無駄を楽しむぜいたくな時間を提供する、居心地の良い空間づくり
—お客様が訪れた際に、どのような時間や感覚を味わってほしいと考えていますか?
岡島様:現代社会では、価値と意味をどれだけ生み出すかに追われてしまいますが、ある意味での“無駄”なものを作って、一息つくような場所をお客様に提供したいと考えています。池波正太郎さんの「無駄なように見えるものをどこまで許容し得るか・・それが文化でしょう」という言葉に共感しています。ただ、ぼーっとできる時間を過ごすための居心地の良い空間を提供できればと考えています。
ボウクス・タイルマーケットに関して
—最後に、ボウクス・タイルマーケットへの要望などありましたら教えてください
岡島様:施主様に設計者がプレゼンをする立場からの観点ですが、タイルの詳細な情報が載っていると嬉しく思います。どこの会社のどのタイルなのかは掲載されていますが、模している天然石の写真など、ある種マニアックなくらいの情報量があると、それをそしゃくして提案できます。施主様にとっては情報量を絞った方が見やすいということもあるかもしれませんが、提案する設計者側としては、情報量が多い方がありがたいです。
対談を終えて – 担当:沖村
空間デザインには、当然かつ緻密に計算されたルールやセオリー、そして歴史に裏付けられた本質が不可欠です。タイルほど歴史の長い建材に至っては、その要素の大きさは計り知れません。
ただ一方で、その背景にある「物語」は、人の数、作品の数だけ存在しているのも事実です。私は、弊社ブランドTile Capsuleのフロントメンバーとなるタイルを選定するときに、シリーズがもつそれぞれの異なるストーリーに大きく焦点を合わせています。
今回ご縁あってタイルのご相談をいただき、“部材” だったタイルが “空間” となったその場所で、岡島オーナーの人となりとお店の歴史を知る時間を堪能させていただけたこと、心より感謝いたします。(シーシャも最高でした。)
この一連を通して、タイルが持っていたストーリーが使い手のストーリーと重なった瞬間をはっきりと見たように思い、大変感慨深い思いです。
これからも見た目、質感、機能はもちろんながら、背景にある想いや情熱、歴史などを汲み取った商品の選定をしていきたいです。
岡島さま、この度はありがとうございました。
Smoke down 渋谷松濤様にご採用いただいたタイルのご紹介
イギリスの古レンガをモチーフとして作られたブリックタイル「MANCHESTER (MC) – マンチェスター」。 古レンガの欠けやひびなどの味わい深いレンガ形状をリメイクして、しっくりとした趣のある製品に仕上がりました。重厚感のある住宅・店舗の壁面仕上げ材としておすすめです。
- DELCONCA Lavaredo – ラヴァレド(HLA)
イタリアの伝統的な美しさと質感を現代の空間に持ち込むことを目指しています。Luserna石の自然な美しさと多様性を取り入れ、それを磁器質のタイルとして再現することで、家の中に石のような温かみと高級感をもたらします。機能性も優れており、抵抗評価(DIN51130)R10で滑りにくく、耐摩耗性があり、特別なメンテナンスも不要という特徴があります。
【Smoke down渋谷松濤】
住所:東京都渋谷区松濤2-14-12 シャンボール松濤104
電話番号:03-6456-8080
アクセス:渋谷駅から徒歩11分
※詳細は公式ページをご確認ください。